#19【健康は、よい睡眠から】その①

健康にとって睡眠が大事であるという意識は最近多くの方が持たれているようです。しかし、だからこそ色んな企業やメーカーが新商品を広告で打ち出し、今では数えきれない程の種類の寝具が存在します。この中からどれが自分に合った寝具なのか選ぶのは容易ではないでしょう。あらゆるメーカーが企業努力をして開発して「最高の寝心地」や「肩こりが解消する」などポジティブな打ち出しをしているので、選択ができないのも無理もありません。
そこで、考える”基準”がしっかりとあれば選択は容易にできてきます。それは、目的を何とするかです。今回は表題の通り、健康を目的とした場合の睡眠環境についてお話いたします。

【環境を変える重要性】

例えば、糖尿病の人が食事療法をすると血糖値が正常に近い形で保たれます。しかし、これは改善して完治したのではなく単に症状が治まった状態。なので、食事療法を怠るとまた元の状態に戻ってしまいます。また、精神的ストレスから不眠症になった人でも薬を飲めばその時は眠れるでしょう。しかし、薬を手放すともう眠れない筈。根本的なストレスが改善していない為眠れないのです。何事でも原因が改善しない限り治癒することはありません。これは腰痛や肩こりの場合でも、他の病気の場合でも同じことです。

このようにして元の状態に戻った人は「また治療を受けよう」と考えます。あまりにも自分の生活を見直そうと考える人が少ないです。ここからが悪循環の始まりであり治療を頻繁に受けだすと、最初の時より一段と早く治療前の状態に戻るようになります。これは、体が「治療する」「戻る」ということに対して順応してくる為で治療を止めるとあっさり治療前の状態に体が戻ってしまうのです。せめてこの辺りで気づいてくれればいいのですが、世の中的にはこういった知識がまだ浸透しておらず今度は「効かなかった」と捉えてしまうのです。だから次はもっと強くしてもらおうとか、違う所に行こうという風に考えてしまいます。この繰り返しを行い、悪循環に陥ってしまう人が非常に多いのが現状です。
薬物中毒という言葉がありますが、治療も体に対するひとつの刺激であり、受け方を間違えると中毒化します。「治療中毒」になると、治療を受けずにはいられない体になってしまうのです。しかも、これは全て誰かが貶めたのではなく本人が自分で好んで作った体なのです。あなたの周りにも心当たりのある人はいませんか?

生活に問題があることを無視して、治療で治そうと思っているから治療中毒に行き詰ってしまう…。根源は自分の生活環境にあるのだから、環境が良ければ当然悪くなりません。病気になる、ならない、の大きな差はここにあるように感じます。腰痛の人が増えているといっても、誰もがそうなる訳ではなく生活環境の中に腰痛の原因があるから腰痛になるのです。このような人は生活環境の見直しが最優先にすべきであり治療という目先のことばかりに囚われていてはいけません。
長年、治療に頼りっぱなしの腰痛患者は治療をして帰っても必ずと言える程また来院されます。これは、生活環境に問題がありながら一向に改善しようとしないからで、このような人はどんなに腕のいい治療院に何年通ったとしても治ることは考えにくいでしょう。本当に腰痛と"さよなら"したいのであれば生活という根本から正さない限りは難しいと思います。どんな症状であれ完治させるのは本人以外にないのです。治療をして少しでも良くなったのであればその状態を維持して欲しいものです。

【眠れないのは異常】

現代人は十分な睡眠を取れていない不眠症の割合が一般成人の30~40%を占めています。睡眠は、日常の生活の疲労を取り去り体を正常に保つための矯正作用とともに、精神的な疲れをも癒す大切なものです。しかし、仕事や日常生活の習慣を理由に中々できないと無視している場合が多く、習慣を変えるのは簡単なことではないということは分かるのですが、改善しようとする努力をしないことには問題があります。その結果として、ほとんどの人々が慢性的な睡眠不足に悩まされているのです。さらに、現代社会にはストレスが渦巻いています。精神的な疲れは眠りを妨げ、それがまた心に疲労をもたらしストレスに追い打ちをかけてますます眠れなくしている…。この悪循環から早く抜け出さなければなりません。
しかし、国内的に不眠症の割合が増加傾向にあることから眠れないのは自分だけではないという安心感からか、眠れない現状をあまり真剣に捉えていない人が多いのも事実です。睡眠が重要なのは何時間寝たというような"量"ではなく、いかに"質"のよい眠りが得られたかという点にあります。よい睡眠は、それを得るための環境や条件の善し悪しによって左右される為、先程と同様、寝る環境がいかに大切かが分かります。

【睡眠時の刺激は非常に敏感】

昼間の日常のストレスは、意識が働いている為抵抗することもできます。しかし、睡眠中は意識が低下している為抵抗して体を守ることは困難です。身近な例えで言うと、寝冷えはそのひとつであり起きている時は何ともない温度の差であっても、抵抗力が弱まっている睡眠中には対応することが出来ずに寝冷えしてしまうのです。人間の体はデリケートなものであり、光や音や温度その他、睡眠中に体を取り巻く環境には十分な配慮が必要になります。特に直接体に関わる寝具は、ひとつ間違うと恐ろしい結果になることを知っておかなければなりません。

寝ている間に「"こり"をほぐす」という触れ込みでイオン配合などの媒体を使った寝具が売られていますが、これには注意すべき点があります。全身が眠っている際に血の巡りだけ促進させるというのは冷静に考えると、おかしな話です。睡眠時に心臓に大きな負荷がかかってきます。電気毛布も同様で「心臓に悪い方はご遠慮ください」と記載されているということは、心臓にとって負担がかかる可能性があることを意味します。
また、人間は刺激に慣れる習性を持っています。しかし、これはいい事ばかりではなく慣れないと体がもたないから仕方なく慣れているケースもあります。このことを本人が理解できずに許容の限界を超えると"病気"というツケが回ってきます。電気毛布に頼らなければ寝ている時の血行が上手く循環しないようになると、やがて起きている時にも電気や磁石などに頼らないと血の巡りが停滞してしまうようになります。この場合は、れっきとした「中毒」で悪い状態に体が慣れることで非常に悲しいことなのです。繰り返しますが、眠っている時は無防備でありちょっとした刺激でさえも大きなストレスになることを覚えておいていただきたいです。

【正しい枕の選び方】

寝る環境で見逃せないのが"枕"。不健康な枕の当て方をする人が多すぎます。大勢の人が枕は頭にあてるものだと思っているようですが、これはわざわざ病気を蓄えているようなものです。#10で記したように首は前湾している必要があります。ということは、枕を頭に当てると首は強制的に本来あるべき形とは真逆の方向へ曲げられることになり、弊害が生まれます。よって枕は首に当てると健康的です。それも、頸椎の湾曲と同じカーブをもつ枕であることが望ましいです。また、頸椎にとっていい状態を安定して維持してくれる、適度の軟らかさと半円形の形状のものがより良いです。ですので、多くの人が寝慣れている枕を高くして寝る"高枕"は最も好ましくない寝方なのです。

【姿勢は夜つくられる】

これまでの記事で体の慢性的な症状には「姿勢」が関与している割合が高いということは、沢山お伝えしてきました。健康にとって姿勢はとても大切なものです。そういった意味では姿勢をに気かけて生活している人達も、数十年前と比べるとここ最近では、ちらほら増えてきているように感じます。これは大変喜ばしいことではありますが、まだまだ多くの人が肝心なことを抜かして考えているようです。悪い姿勢を本来の自然で健康な姿に戻す鍵は、起きている時よりも寝ている時の条件にあるという事を知っていただきたいです。

起きている時は、骨を歪める(姿勢を悪くする)悪影響を強く受けますが、改善する為の姿勢にとって良い影響はほとんど受けることはありません。理由はいたってシンプルであり、生物史上人間のみ直立二足歩行の構造に骨格ができており、背骨が縦に連なっている為常に重力に逆らって生活をせざるを得ないからです。また、骨が筋肉によって一定の状態に支えられたり保護されたりしている為でもあります。この働きは例え骨が曲がっても変わることはないので、悪い状態でもそのまま固定されることになります。こうなった骨を無理に正しいポジションへ戻そうとしても、筋肉のクセが元の悪い位置に引き戻そうとするのです。
このことから分かることは、骨(姿勢)を矯正しようとするならば筋肉が休んでいる寝た瞬間を狙うしかないということです。人が起きている時は筋肉も目覚めていますが、寝ている時は筋肉も眠ります。この時が矯正をする最大のチャンスなのです。

睡眠がいかに大切なのか。また、睡眠環境がいかに健康を左右するのかお分かりいただけましたでしょうか。次の記事では、どのような寝具が健康にとって良いのか。この詳細について記しますので、是非ご覧になられてください。